約半数の中小企業が「目標なし経営」|計画のない企業は廃業リスクが高い?

はじめに|“行き当たりばったり経営”が通用しなくなった時代
「とりあえず目の前の業務をこなすことで精一杯」「将来のことまで考える余裕がない」
——これは多くの中小企業経営者が感じている正直な声です。
しかし、今私たちを取り巻く環境はどうでしょうか?
・原材料価格や人件費の高騰
・デジタル化やAIの加速
・人手不足と採用難
・融資の審査厳格化
こうした変化の中で、目の前の業務をただ回しているだけでは、経営は維持できません。
だからこそ、明確な“地図”=事業計画が必要なのです。
この記事では、以下のことをお伝えします:
・中小企業の計画策定・運用の実態
・計画の有無で企業の未来はどう変わるのか?
・成功している会社がやっている計画の活かし方
最新データで見る中小企業の計画実態
中小企業庁が発表した調査(2023年)によると、中小企業の事業計画に関する実態は以下のとおりです。
■ 事業計画に関する実施状況(出典:中小企業庁)
項目 | 割合 |
経営計画を策定している企業 | 53.0% |
策定した計画の進捗管理を「十分」実施している企業 | 45.8% |
計画の見直し・評価を「十分」実施している企業 | 41.2% |
→ 約半数の企業はそもそも「計画なし経営」であり、
さらに立てた計画を“活用”している企業は全体の4割以下にとどまっているのが実態です。
廃業リスクとの関係|計画が未来を守る“保険”になる
「ウチは毎年なんとなく黒字だから大丈夫」と思っていても、それは偶然かもしれません。
事実、2020年版小規模企業白書では、廃業を検討している企業のうち約35.2%が“経常赤字”という結果が示されました。
また、「業績の悪化」「将来の見通しの不安」が主な理由として挙げられています。
さらに、起業後の生存率を見ると…
・創業1年後:72%
・創業3年後:50%
・創業5年後:40%
(出典:経済産業省)
このように、年数が経つにつれて生存率が下がる背景には、“計画性の欠如”があると指摘されています。
なぜ事業計画が必要なのか?|経営に与える5つの効果
事業計画を立てることは、単なる“資料作り”ではありません。
それは経営を進化させる「5つの力」を持っています。
■ 事業計画がもたらす5つの力
- 方向性の共有
社員全体が「どこに向かうのか」を理解でき、まとまりが生まれる。 - 意思決定の明確化
日々の判断に迷いがなくなり、「今やるべきこと」がはっきりする。 - 数値管理と改善
勘ではなく数字で現状を捉えられ、対策のスピードが上がる。 - 社外からの信用向上
銀行や取引先に「戦略的な企業」と認識され、資金調達もしやすくなる。 - 人材育成の基盤になる
目標に向かって動く中で、社員の視野と責任感が育つ。
成功事例|社員の意識が変わる“見える化”の力
事例:大阪府の製造業(従業員10名)
Before:
・計画なし。数字は社長の“肌感覚”
・銀行交渉もその場しのぎ
・社員は指示待ちで改善提案ゼロ
After(6ヶ月後):
・年間→月間売上を見える化
・社員ごとにKPIを設定(例:面談件数、受注率など)
・会議で「予実差」を共有し、改善案を出し合うように
・銀行との交渉もスムーズになり、追加融資も実現
→ 数字の“見える化”が社員の主体性を育て、組織を動かす起爆剤になりました。
よくある失敗パターン|「形だけの計画」にならないために
計画があっても、活用されなければ意味がありません。
次のようなパターンには要注意です。
・理想論ばかりで、現実性のない目標
・「誰が・いつ・何をするか」が書かれていない
・一度立てたら放置。振り返りも修正もない
→ 計画は“使ってこそ価値がある”という意識が重要です。
“使える計画”の条件|3つのチェックポイント
「この計画、ちゃんと現場で使えている?」
そう自問するために、次の3つをチェックしましょう。
・数字が明確か?(定量化されているか)
・行動に落とし込まれているか?(KPI設定)
・毎月見直す機会があるか?(定例会議など)
この3点が揃っていれば、計画は紙から“経営の羅針盤”に変わります。
まずはここから|シンプルな計画のひな型
「いきなり完璧な事業計画は無理…」という方も大丈夫。
まずは以下のような簡単なフォーマットから始めてみましょう。
項目 | 記入例 |
月次売上目標 | 300万円 |
粗利率目標 | 60%以上 |
行動KPI(営業) | 新規面談10件/月 |
固定費一覧 | 人件費、家賃、広告費など |
振り返りスケジュール | 毎月末に全員で確認する会議を設定 |
→ ExcelやGoogleスプレッドシートでOK!
大事なのは「数字を決めて、振り返る仕組み」を持つことです。
まとめ|事業計画は“未来を守る経営の武器”
・約半数の中小企業は「計画なし経営」をしている
・実際に活用できている企業は全体の4割以下
・廃業リスクや成長の差に“計画の有無”が大きく影響
・計画は小さく始めて、毎月見直すことで価値が生まれる
事業計画は、経営の現在地を知り、未来をつくるための武器です。
まずは「月次の目標を決めて、振り返る」。それだけでも、会社は確実に動き始めます。
ぜひ、今日から一歩を踏み出してみてください。